(1)教師を取り巻く現状 |
子どもたちの育ちの現状は、いじめ、不登校、校内暴力、家庭内暴力等のいわゆる問題行動が高頻度に派生している状況にある。また、登校はしているが不登校傾向にある児童生徒も増加している。
学習面では、必要感をもって学ぶという積極的な学習意欲が乏しく、将来に夢を抱くことができない児童生徒が増えている状況にある。また、児童生徒の学力到達度においても基礎基本の定着の不十分さ、読解力、考える力の低下などが危惧されている。
健康面では、体格と体力のアンバランス、肥満や糖尿病などの生活習慣病もしくはその傾向にある児童生徒が増加し、心身ともにタフな子どもを育てるための対応が求められている。
さらに、学習障害(LD)や注意欠陥多動障害(ADHD)、高機能自閉症などの軽度発達障害を有する児童生徒が通常学級に6~7%在籍しているといわれる。学校教育における子どもの状況は看過できない厳しい状況にあり、児童生徒の教育援助を担う教師の役割はこれまで以上に大きい。 |
(2)現代に求められる教師 |
本学大学院教育学研究科では、教育における現代的な課題に適切に対応し、児童生徒を支えることのできる実践的な力量を備えるために、学部段階からのコア・カリキュラムに加えて研究科においても実践授業研究を編成し、実施している。しかしながら、現在の教育を取り巻く状況に対して、教育現場では、教科指導や道徳教育などの指導的援助、生徒指導や教育相談などの心理的援助は、一人ひとりの児童生徒を理解し、個性を生かし、伸ばすという学校及び教師の1次的教育援助は果たされているが、これからは学校内外の教員同士の協働、保護者や地域の人々との連携・協働、さらには医療や福祉関連の人々や機関と連携・協働するという2次的、3次的教育援助を果たす必要がある。 |
○組織的取り組みのできる教師
児童生徒1人ひとりの抱える教育ニーズは多様であり、1人の教員がすべての教育ニーズに対応することは困難であり、学校内部よび外部諸機関との組織的な取り組みが必要である。学校内においては、教員同士が個別的な児童生徒の特性やおかれた状況等を理解し、情報を共有し、協働して対応する必要がある。外部との関係では、保護者との情報の共有や保護者への働きかけ、福祉や医療機関の専門家と協働して問題の解決にあたる必要がある。 |
○多様な能力をもった教員
児童生徒の多様な教育ニーズを捉えるためには、児童生徒理解のための聴く力、話す力などのコミュニケーション能力のほかに教師としての求心力となるような得意分野の知識と技術の向上を図る必要がある。また、個別的な対応の必要な児童生徒に対してはカウンセラー的な役割、児童生徒や保護者への対応に悩む同僚教師に対してはアドバイスできるコンサルタントとしての機能、特別な支援を必要とする児童生徒や保護者に対しては外部の福祉や医療機関等の専門家と協働する際のコーディネーターとしての力量が必要である。 |